施設基準と実施条件
MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準
2012年8月策定
2014年1月8日改訂
日本医学放射線学会(JRS)
日本磁気共鳴医学会(JSMRM)
日本不整脈学会(JHRS)
はじめに
従来の心臓植込み型電気的デバイス(ペースメーカ、除細動器、両室ペースメーカなど:Cardiac Implantable Electronic Devices, CIEDs)が植込まれた患者の磁気共鳴画像(MRI)検査は原則禁忌である。これは、CIEDs本体がMRI検査によって電磁干渉を受けるほかに,MRI装置の発生する静的・動的電磁界が金属としてのCIEDs本体およびリードに作用するためであり1、さまざまな合併症の報告2-5に加えて死亡例の報告6もある。
近年、MRI検査が可能なCIEDsが開発され、本邦にも導入されることになった。これまでCIEDs装着患者では実質上MRI検査が原則禁忌とされていた医療現場において、医療現場の混乱を回避するとともに患者の安全を確保する目的で、条件付きMRI対応CIEDs患者のMRI検査の施設基準を設定する。当該患者のMRI検査はこの施設基準を満たす施設でのみ可能であり、検査にあたっては必要な実施条件を遵守することが求められる。また、製造販売者は関連学会とともに、条件付きMRI対応CIEDsに関する情報や注意事項を医療従事者だけでなく一般に対しても広く周知させるよう努めることが望まれる。
施設基準
条件付きMRI対応CIEDs装着患者のMRI検査は、以下の基準を満たした施設でのみ施行可能である注1)。
- 放射線科と循環器内科あるいは心臓血管外科を標榜していること。
- 条件付きMRI対応CIEDsの使用説明書に記載された条件で検査が行えること。
- 磁気共鳴専門技術者あるいはそれに準ずる者が配置され、MRI装置の精度および安全を管理していること。
- CIEDsの十分な診療経験があり、デバイス管理が可能であること。
- 関連学会が監修し製造販売会社などが開催する該当機器の適切で安全な使用法に関する所定の研修を修了していること。
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脚注
- 実施条件について当面は2012年8月策定の施設基準に付随した実施条件に準ずること。新たな実施条件ガイドライン策定時には三学会から必要な通知を行なう。
参考文献
- Duru F, Luechinger R, Scheidegger MB, Luscher TF, Boesiger P and Candinas R. Pacing in magnetic resonance imaging environment: Clinical and technical considerations on compatibility. Eur Heart J 2001; 22: 113-124.
- Hayes DL, Holmes DR Jr, Gray JE. Effect of 1.5 tesla nuclear magnetic resonance imaging scanner on implanted permanent pacemakers. J Am Coll Cardio1 1987; 10: 782-786.
- Fontaine JM., Mohamed FB, Gottlieb C, Callans DJ, and Marchlinski FE. Rapid Ventricular Pacing in a Pacemaker Patient Undergoing Magnetic Resonance Imaging. Pacing Clin Electrophysiol 1998; 21: 1336-1339.
- Anfinsen O-G, Berntsen RF, Aass H, Kongsgaard E, and Amlie JP. Implantable Cardioverter Defibrillator Dysfunction During and After Magnetic Resonance Imaging. Pacing Clin Electrophysiol 2002; 25: 1400-1402.
- Fiek M, Remp T, Reithmann C, and Steinbeck G. Complete loss of ICD programmability after magnetic resonance imaging. Pacing Clin Electrophysiol 2004; 27: l002-1004.
- Avery JE. Loss prevention case of the month: not my responsibility! J Tenn Med Assoc 1988; 81: 523.
MRI対応植込み型デバイス患者のMRI検査の施設基準(2014年1月改訂)[PDF :126KB]
MRI対応植込み型デバイス患者のMRI検査の施設基準(2012年8月策定)[PDF :117KB]
本実施条件は日本医学放射線学会、日本磁気共鳴医学会、日本不整脈学会が定める「MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準」を満たす施設において、患者安全を第一に優先した検査を行なうためのものである。各施設においては本実施条件を踏まえて施設の実情に合った適切な実施マニュアルを定めて頂きたい。なお本実施条件は必要に応じて随時更新されるので更新情報に留意されたい。