施設基準と実施条件

 

MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準

はじめに

 従来の心臓植込み型電気的デバイス(ペースメーカ、除細動器、両室ペースメーカなど:Cardiac Implantable Electronic Devices, CIEDs)が植込まれた患者の磁気共鳴画像(MRI)検査は原則禁忌である。これは、CIEDs本体がMRI検査によって電磁干渉を受けるほかに,MRI装置の発生する静的・動的電磁界が金属としてのCIEDs本体およびリードに作用するためであり1、さまざまな合併症の報告2-5に加えて死亡例の報告6もある。
近年、MRI検査が可能なCIEDsが開発され、本邦にも導入されることになった。これまでCIEDs装着患者では実質上MRI検査が原則禁忌とされていた医療現場において、医療現場の混乱を回避するとともに患者の安全を確保する目的で、条件付きMRI対応CIEDs患者のMRI検査の施設基準を設定する。当該患者のMRI検査はこの施設基準を満たす施設でのみ可能であり、検査にあたっては必要な実施条件を遵守することが求められる。また、製造販売者は関連学会とともに、条件付きMRI対応CIEDsに関する情報や注意事項を医療従事者だけでなく一般に対しても広く周知させるよう努めることが望まれる。

施設基準

条件付きMRI対応CIEDs装着患者のMRI検査は、以下の基準を満たした施設でのみ施行可能である注1)

  1. 放射線科と循環器内科あるいは心臓血管外科を標榜していること。
  2. 条件付きMRI対応CIEDsの使用説明書に記載された条件で検査が行えること。
  3. 磁気共鳴専門技術者あるいはそれに準ずる者が配置され、MRI装置の精度および安全を管理していること。
  4. CIEDsの十分な診療経験があり、デバイス管理が可能であること。
  5. 関連学会が監修し製造販売会社などが開催する該当機器の適切で安全な使用法に関する所定の研修を修了していること。

脚注

  1. 実施条件について当面は2012年8月策定の施設基準に付随した実施条件に準ずること。新たな実施条件ガイドライン策定時には三学会から必要な通知を行なう。

参考文献

  1. Duru F, Luechinger R, Scheidegger MB, Luscher TF, Boesiger P and Candinas R. Pacing in magnetic resonance imaging environment: Clinical and technical considerations on compatibility. Eur Heart J 2001; 22: 113-124.
  2. Hayes DL, Holmes DR Jr, Gray JE. Effect of 1.5 tesla nuclear magnetic resonance imaging scanner on implanted permanent pacemakers. J Am Coll Cardio1 1987; 10: 782-786.
  3. Fontaine JM., Mohamed FB, Gottlieb C, Callans DJ, and Marchlinski FE. Rapid Ventricular Pacing in a Pacemaker Patient Undergoing Magnetic Resonance Imaging. Pacing Clin Electrophysiol 1998; 21: 1336-1339.
  4. Anfinsen O-G, Berntsen RF, Aass H, Kongsgaard E, and Amlie JP. Implantable Cardioverter Defibrillator Dysfunction During and After Magnetic Resonance Imaging. Pacing Clin Electrophysiol 2002; 25: 1400-1402.
  5. Fiek M, Remp T, Reithmann C, and Steinbeck G. Complete loss of ICD programmability after magnetic resonance imaging. Pacing Clin Electrophysiol 2004; 27: l002-1004.
  6. Avery JE. Loss prevention case of the month: not my responsibility! J Tenn Med Assoc 1988; 81: 523.


    MRI対応植込み型デバイス患者のMRI検査の施設基準(2014年1月改訂)[PDF :126KB]
    MRI対応植込み型デバイス患者のMRI検査の施設基準(2012年8月策定)[PDF :117KB]

 


 

MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査実施条件

はじめに

 本実施条件は日本医学放射線学会、日本磁気共鳴医学会、日本不整脈学会が定める「MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準」を満たす施設において、患者安全を第一に優先した検査を行なうためのものである。各施設においては本実施条件を踏まえて施設の実情に合った適切な実施マニュアルを定めて頂きたい。なお本実施条件は必要に応じて随時更新されるので更新情報に留意されたい。

実施条件

  1. MRI対応心臓植込み型電気的デバイス(ペースメーカ、除細動器、両室ペースメーカなど:Cardiac Implantable Electronic Devices, CIEDs)の使用説明書に記載された条件で一貫して検査が行えるように設定できるMRI 装置注1)を使用すること。
  2. MRI対応CIEDs 装着患者のMRI検査を実施する前に、関係する循環器医師,放射線科 医師,診療放射線技師注2),ならびに臨床工学技士注3)の各々が所定の研修を修了してい ること。
  3. MRI検査の実施に際しては、研修を修了した循環器医師がMRI検査の安全性を確認し、その後同医師が検査の依頼を行う。循環器医師以外が検査を依頼する 場合、あるいは他院でMRI対応CIEDs を植込まれた患者の検査を行なう場合においても、同様な手順を行う注4)。
  4. MRI非対応CIEDs 装着患者との区別を明確にする目的で、患者は常に「MRI対応心臓植込み型電気デバイス」などと明示されたカード注5)を携帯し、MRI検査の際にはペースメーカ手帳などとともに提示しなければMRI検査を受けることはできない。
  5. 検査に際しては、MRI対応CIEDs 装着患者のMRI検査マニュアル注6)を遵守するとともに、MRI検査依頼時から検査後までのチェックリスト注7)に従って検査を行う。
  6. MRI検査直前の最終確認は循環器医師、または臨床工学技士あるいは臨床検査技師が行なう。
  7. 検査中はパルスオキシメーターあるいは心電図モニターを用いて心拍を連続的に監視する。また、近接した部屋に電気的除細動器を備え、必要な時に直ちに使用できるようにしておくこと。
  8. 不整脈発生など検査中の不測の事態に即座に対応できる体制のあること。必要に応じて循環器医師が検査に立ち会うことが望ましい。
  9. MRI検査後のCIEDs のリプログラミングの確認は循環器医師が行う。

脚注

  1. IEC 60601-2-33(JIS:Z4951)に準拠して製造・販売されたMRI 装置が望ましいが、やむを得ず本規格適用以前のMRI 装置を使用する場合には、CIEDs 使用説明書に記載されたSAR、スルーレートなどに関する当該装置の仕様が、本規格に定められた条件に適合していることを当該装置の製造者に確認し、書面による証明を受けること。
  2. または臨床検査技師
  3. または臨床検査技師、あるいは看護師
  4. MRI検査を依頼する医師は施設においてあらかじめ定めた研修を受けるこ ととする。
  5. 日本不整脈学会と日本不整脈デバイス工業会の指導の下に各製品の製造販売者が作製 する。カードは各社で統一の規格とする。
  6. マニュアルには下記に準じた記載があること。
    1. 検査の適応について
      放射線科医師(放射線診断専門医あるいはそれに準ずるMRI の経験がある放射線科専門医、常勤・非常勤は問わない)が配置され、MRI検査依頼に関して、そのリスクとベネフィットを検討すること。
    2. 検査の実施について
      常勤の日本磁気共鳴専門技術者(MR 専門技術者)が、MRI検査の諸条件が設定内であることの確認を行うこと。但し、暫定的に、MR 専門技術者に準ずる者がこの確認を行なうことも可とする。
  7. チェックリストには下記に準じた記載があり、MRI検査の前後ならびに検査中におい ても常に閲覧が可能なこと。
    1. MRI検査の対象となる疾患名と検査の必要性
    2. MRI検査の対象となる臓器あるいは撮像予定部位
    3. CIEDs の機種の違いによる撮像条件の違い及びそれに関する注意事項
    4. 予定した撮像条件が当該CIEDs の撮像条件の範囲内であることの確認
    5. CIEDs の適応となった疾患名と検査時の全身状態
    6. 装着されているCIEDs がMRI対応であることの客観的な確認
    7. MRI対応CIEDs に接続されていない遺残リードがないことの確認
    8. MRI検査前のCIEDs の設定と刺激閾値など各種計測値
    9. MRI検査に備えて行われるCIEDs のプログラミングとその結果の確認
    10. MRI検査直前の最終確認
    11. MRI検査後のCIEDs のリプログラミングとその結果の確認


    MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査実施条件(2014年11月13日)[PDF :84KB]

 

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